5月29日、30日と会長の木村理教授のもと開催されました。興味を引かれた点をかいつまんで書いてみます。まず、会長講演。東京大学第1外科そして肝胆膵外科出身の先生は、今までの研究と臨床経験、膵腫瘍、そして手術に関する会長講演で、終盤はほとんど涙声。木村先生の優れた業績と力強い歩みがわかるすばらしいご講演でした。そして、学会スローガンが、安全確実な肝胆膵外科、mortalityゼロをめざして、に相応しい手術に対する先生の真摯な人柄が表れてました。
ビデオシンポ「最先端のIVRおよび鏡視下手術」、自身の発表もあり、膵脾と肝胆をそれぞれ聞きました。なお、肝胆の司会は若林教授でした。感想の第一は、とうとう肝胆膵脾外科も内視鏡手術が進化したなというのが驚きでした。巨脾に対する脾摘、この適応は、肝硬変のインターフェロン治療とHCC治療時に血小板減少が障害になることであり、適応が増えてきた、それをラパロでやろうというもの。脾周囲の剥離は、リガシュアで安全になった。静脈もリガシュアで切離できるが、胃周囲の累々とした静脈瘤例は除外すべきとの意見。剥離を十分行えば、後は自動縫合器による脾門の一括切離で終えられる。また太い静脈はカッターのグレイで安全に切離できる。脾動脈は、胃静脈の左側で捜し処理する。膵瘻はない。膵体尾部切除も、エシェロン10分法という大変有用な方法が、そして良好な成績が九大第1外科から発表された。これは、膵を5分かけゆっくり圧挫した後、そのまま10分間圧挫。その後縫合切離する。開腹手術を含め臨床的に膵瘻はなかった。グリーンカートリッジの使用により。また、日本医大中村先生のPDのご発表も凄かった。
私の総胆管結石手術には、総胆管切石は、胆管切開の方が楽でいいとのご意見が多いようであった。確かにそうであるが、米国では80%が経胆嚢管法で出来るとの報告もある。一期的縫合にCチューブを追加すべきとの意見が会場では多かったが、本邦の現状はドレナージを置かない方が少なくない。早い、総胆管結石手術の普及が望まれる。来年の本会では、EST vs乳頭温存のディベートがあるそうな。しかし、日本国はどうも、良性疾患より癌手術が圧倒的な人気だなあ、と感じました。